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太陽光パネルの発電量は、なぜ低下するのか

― 光触媒コーティングが引き起こす物理的要因 ―

太陽光パネルの発電量低下は、単なる「汚れ」だけが原因ではありません。
実際の現場では、施工後に施された表面処理そのものが、発電量低下を招いているケースも数多く確認されています。

本章では、**「なぜ発電量が下がるのか」**を、実測報告と物理的メカニズムの両面から整理します。

一般的な光触媒コーティングとは何か

光触媒コーティングは、「防汚」「自己洗浄」を目的として、これまで数多くの実証試験やフィールド導入が行われてきました。

しかし、実際の太陽光発電設備においては、施工後に発電量が低下したという報告が、国内外で繰り返し確認されています。

これらの低下要因は、大きく 4つ に分類できます。

① 反射率の増加(可視光の損失)

多くの光触媒コーティングは、乾燥後にガラス表面へ非常に薄い酸化チタン(TiO₂)膜を形成します。

TiO₂とガラスの屈折率は次の通りです。

  • TiO₂:n ≈ 2.5

  • ガラス:n ≈ 1.5

この屈折率差により、膜を形成すると界面反射が増加します。

実測報告例(整理)

  • 国内研究施設の長期実証試験
     ・塗布直後:約10%台前半の低下
     ・経時後:約15%前後の低下

  • 国内外のフィールド試験において
     ・5〜20%程度の光学ロスが報告

原因整理

  • 光触媒膜はアンチリフレクション構造を持たない

  • 高屈折率TiO₂により、反射が抑制されるどころか増加

  • 結果として、セルに到達する光子数が減少

② 表面温度の上昇による熱損失

TiO₂コーティング後、
パネル表面温度の上昇が複数の試験で確認されています。

主な要因

  • 紫外光を中心とした光吸収による発熱

  • 表面反応に伴う局所的な熱発生

  • 膜形成による熱拡散特性の変化

  • ガラス表面に「熱だまり」が生じやすくなる

温度と発電効率の関係

結晶シリコン太陽電池の温度係数は
−0.3〜−0.5%/℃

つまり、

  • 表面温度が10℃上昇
    → 発電量は 約3〜5%低下

光触媒膜は、この温度上昇を誘発する条件を持ち、長期的な発電量低下の要因となり得ます。

③ 光散乱(ヘイズ)の増加

TiO₂はナノ粒子であっても屈折率が高く、膜表面にわずかなムラや粗さがあるだけで、光散乱(ヘイズ)が増加します。

その結果、直達光が散乱光に変換、セル吸収層へ到達する光量が減少、特に、、朝夕の低角度入射光、冬季の日射条件では影響が大きく、年間発電量で 数%〜十数%のロスにつながる場合があります。

④ 光触媒が「反応を止められない」ことによる表面劣化

TiO₂は紫外光が存在する限り、反応を停止する機構を持ちません。

その結果、長期的に次のような現象が生じます。

  • ガラス表面の Si–O 結合への影響

  • 親水性の制御不能な変化

  • 表面の化学的平滑性の低下

  • 汚れが付着しやすくなる二次劣化

これにより、

  • 光学ロスがさらに増加

  • 防汚性能自体も低下

するケースが確認されています。

この現象は、高速道路のポリカーボネート防音壁が全国的に白化した事例でも知られており、光触媒による過剰な表面反応が劣化を招いた代表例とされています。


結論:光触媒コーティングは太陽光パネル用途では慎重な検討が必要

整理すると、光触媒コーティングは、

  • 反射率の増加

  • 表面温度の上昇

  • 光散乱の増加

  • 表面の化学的劣化

といった要因が複合的に作用し、
実発電量を低下させるリスクを構造的に内包しています。


「発電量が上がった」という報告が存在する理由

一方で、「光触媒で発電量が上がった」という報告も存在します。
これらは以下の条件で説明できます。

① 清掃効果の誤認

施工直後の親水化により、単に「汚れが落ちた状態に戻った」だけのケース。

② 濡れ膜状態による一時的効果

未乾燥状態では屈折率連続性が一時的に改善するが、乾燥後は反射・散乱が増加。

③ SiO₂系被膜との混同

SiO₂は低屈折率で透明性が高く、「光触媒」と誤認された事例。

④ 架台・フレーム施工による間接影響

ガラス性能とは無関係な改善。

⑤ 短期測定・天候差による統計誤差

数%〜10%程度の自然変動を効果と誤認。


最終整理

「良い結果が出た」という報告は存在しますが、それらはすべて、

  • 短期的な濡れ膜効果

  • 清掃直後の回復

  • 材料誤認

  • 測定誤差

によって説明可能です。

長期・正確な評価において、TiO₂光触媒が太陽光パネルの発電量を恒常的に向上させた事例は確認されていません。

むしろ、国内外で一貫して5〜20%程度の発電量低下リスクが報告されています。