── 光触媒と半導体がつくった、日本独自の歪み──
まず、はっきり言っておきます。
「抗菌」という言葉そのものが、外国では日本ほど通用しません。
少なくとも、日本で使われている意味のままでは通じない。
これは技術の問題ではなく、言葉の問題なのです。

日本で「抗菌」と言うと、多くの場合、次の意味が自動的に付与されます。
「短時間で菌を何%減らせたか!?」つまり実質的には、除菌・殺菌の数値表現です。
ここではもう、「増えにくい」「定着しにくい」「環境を整える」といった概念は入り込む余地がありません。
抗菌とは名ばかりで、中身は 減少率競争 です。
一方、中国語の「抗菌(抑菌)」はどうか。
中国では今も、「繁殖を抑える」「付着しにくくする」「生長しにくい状態をつくる」
といった 環境・抑制の概念 が、正しく抗菌に含まれています。
つまり中国では、抗菌は 「殺す」ことに限定されていない。
この時点で、日本の抗菌観は、すでにズレています。
さらに言えば、英語圏では事情はもっと明確です。
bactericidal(殺す)
bacteriostatic(増やさない)
growth inhibition(増殖抑制)
antimicrobial(作用する)
役割ごとに言葉が分かれている。
「抗菌」という曖昧な一語で、全部をまとめる文化がありません。
だから、「抗菌ですか?」という日本的な質問自体が、海外では成立しにくい。
ここで、1970年代の光触媒が登場します。
日本では、「光を当てる」「強く分解する」「菌が死ぬ」「数値が出る」
という 光触媒モデル が、学術・産業・行政のすべてで成功しました。
この成功体験が、抗菌とは「壊すこと」、効くとは「早いこと」、科学とは「%で示せること」
という価値観を固定化します。
「半導体光触媒」という言葉も、その一例です。
本来、半導体とは電子構造と物性を表す物理用語です。
しかし日本では、「光が当たる」「反応する」「何か分解する」というだけで、半導体という言葉が乱用されていきました。
結果として、現象より言葉が先行し、定義よりイメージが支配し、試験に合うかどうかが真理になる
という状態が生まれます。
REDOXは、「菌を大量に殺さない」「強く分解しない」「派手な反応を見せない」「表面環境を整える」「時間の中で差が出る」という技術です。
これは、中国語や英語の文脈では、十分に抗菌(抑制・bacteriostatic) です。
しかし日本語の「抗菌」という言葉を使うと、必ずこう聞かれます。
「何%減りますか?」「何分で効きますか?」「SIAAは取れますか?」
その瞬間、話している現象が 別物にすり替わる。
だから日本では、あえて「抗菌」と言わない。
これは、日本の技術が劣っているという話ではありません。
日本では、光触媒の成功体験によって、抗菌という言葉が本来の意味から逸脱した。
それだけのことです。
日本では、抗菌という言葉が、科学用語ではなく、マーケティング用語になってしまった。
REDOXは、その言葉に合わせるのではなく、現象に忠実であろうとしている。
それだけです。
REDOXが日本で「抗菌と言えない」のは、技術の問題ではない。
言葉の問題である。